2013年1月11日金曜日

今年の仕事はスタインウェイから


今年の仕事は新年早々スタインウェイの納品調律から始まりました。
なにか縁起いいですよね。
新品のピアノのメンテで一年始められるって。




スタインウェイのアクションです。新品なので奇麗ですよね。
奇麗で当たり前ですが、一日でも永くこの状態をキープ出来るようにこれから
頑張らないといけません。





因みに左はボストンのアクション。
設計はスタインウェイですからフレンジや、フレンジの下の赤いクロスも
よく似ています。ちなみにスタインウェイのセンターピンなんかは、折るタイプですので
断面が丸くてバリがでていません。その辺も高い理由の一つです。

右はおなじみヤマハのアクション。
最も普及しているモデルなので、あえて書く事もないと思います。




これはカワイのアクション、黒い所が樹脂で出来ています。
これはこれでメーカで販売している楽器なので否定はしませんが
気分があまり乗らないアクションです。




スタインウェイのキーフレームですが、フロント部分が棚板に当たる先端の部分以外削られていて先端のわずかな部分だけが当たるようになっているのが分かるでしょうか?
国産のほとんどのメーカーはここが平です。




スタインウェイの拍子木ですが、打弦点は拍子木で決めていますので
打弦点を微調整出来る構造になっています。




ヤマハの拍子木です。見飽きてますが(笑)
スタインウェイみたいにしょっちゅう拍子木入れたり外したりしなくても
ほとんど問題なく調整出来るので作業性はいいですが、安っぽいです。




ベーゼンドルファーの拍子木。僕がメンテナンスしてるベーゼンの中では最も
状態のいい楽器のモノですが、奇麗ですよね。作りが丁寧。
基本ベーゼンのアクションが美しくて好きです。
スタインウェイもいいのですが、ピアノの作りは丁寧で奇麗。
鉄骨なんかは美しいの一言です。
拍子木のストッパーがなかなかいい仕事してくれます。





スタインウェイの拍子木ですが、分かり難いですが、マイナスネジの横に小さい穴が
空いているのが分かりますでしょうか?そこに六画レンチ突っ込んで打弦点の微調整
出来ます。




次にダンパー機構ですが、これがまた独特。
スタインウェイですが、レールに貼りつけです。鍵盤の割に合わせて
ダンパーを位置決めしてた名残みたいですが、ネジで止まっていないので
修理の際は特殊な事をします。特に一つだけ外す時にですが。
他のメーカーしか知らない人には思いつきもしないと思いますが(笑)





見慣れたヤマハのCF系のダンパー機構です。ホールの仕事してる人間にとっては嫌って程
触ってる何処にでも置いてるピアノのダンパーなのであえて書く事もないと思いますが、
鍵盤弾いた時と、ダンパーペダル踏んだ時に違う動きをするダンパーです。
ハーフペダル考慮したダンパーですが、普及モデルにはない機構です。





カワイの樹脂ダンパー機構、樹脂系の部品は辞めて欲しいのですが、コスト考えると
しょうがないのかも知れませんね。





赤いクロスやハンマーのフレンジはエネルギーロスをなくす構造になっていますが
詳しい理屈を知りたい所です、どんな力が部品にかかっているのか、どうしてこの
形に落ち着いたのか、設計のかなり詳しい事も調べてみたら面白いかも知れません。
調律師でも、力学的な数値や設計の細かい計算まで分からない事もあります。
まだまだ勉強する事は沢山あります。





スタインウェイのレペティションレバースプリングですが、スプリングの頭を
磨く時に各メーカー形が違います。
スタインウェイは丸く半円系になっています。ヤマハよりも雑音が出難いのは形も
関係してるのかどうかは分かりませんが、ヤマハでほったらかしにしてるピアノは
このスプリングの雑音も結構出ます。
カワイなんかではスプリングにグリスみたいなベットリしたモノを塗っていますが、
時々これが粘度高くなったり、すべりが悪くなって動き難くなってしまう事がありますが、以前カワイの本社の技術者に聴いたら、やっぱり薬品で拭い去ってると言っていました。僕も同じ事してますが、毎年スプリングを磨くと言うのを前提での話です。








僕が仕事させて頂いているベーゼンドルファーの鉄骨です。
色の好みもあるかも知れませんが、僕は好きです。とにかく奇麗。





アクションの手前上にピン板があります。
スタインウェイは一体構造ですので基本ピン板の交換不可ですが、たまに工房で
ピン板を切り抜いて新しく入れ込んでる楽器があります、中古で買う時はチェック
しておかないと、強度の低下したピアノを高いお金出して買う事になっていまいます。
スタインウェイの構造で棚板とキーフレームの関係も他のメーカとは違いますが、
これをカンナで削ってしまってる残念なピアノも見た事があります。
スタインウェイは棚板の中央部が鍵盤のフロント側だけほんのわずかになだらかに
盛り上がっていて、キーフレームはそれとは逆に反った形になっています。
アクション乗せたらキーフレームと棚板の間に両端だけ隙間が出来ます。
それを拍子木で押さえ込む構造になっているので、他のメーカーとは少し調整も
違って来ます。それを知らずに削ってヤマハみたいに真っ平らにしてしまっている
ピアノもあるんです。棚もキーフレームも。こうなると残念としか言えませんよね。
それを高い値段で買ってしまってるピアニストもいれば、売る技術者もいる位ですから
やはりちゃんとした知識を弾く方も持つべきだと思います。そうすれば損はしないと
思います。それを何気に知ってもらえるように説明するのも僕達の仕事かも知れません。